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「ヒマラヤと日本は関係ないでしょう?」
「何で、ヒマラヤに関心を持たねばならないの?」
この様なお言葉を、これまでに講演等を通じてお聞きしてきました。
とんでもありません。ヒマラヤと日本は大いに関係がありますし、注視すべき場所なのです:

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■「梅雨」
今から遥か昔、約5000万年前にインド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して誕生したのが「ヒマラヤ」です。ヒマラヤは東西約2400km南北約250kmの広大な地域で、その中に日本の本土がすっぽりと収まってしまいます。この長大な壁・ヒマラヤ山脈は偏西風を蛇行させます。

【*宇宙からヒマラヤを望む:中央の白い”帯”がヒマラヤ山脈。左側がインド亜大陸、右がチベット高原】
毎年6月、赤道近くのインド洋上で発生した水蒸気は雲となってインドを北上しますが、ヒマラヤ山脈により蛇行した偏西風に乗って雲は東へと移動していきます。結果、水分を豊富に含んだその雨雲は、中国の南部から東南アジア地域に多量の雨を降らせます。これが、アジアモンスーンで、豊かな農業地帯を作り上げています。


■「仏教」
仏教は古より日本の社会の形成に大きく寄与してきました。現代社会の中で仏教は表向きには目立たなくなっているとはいえ、昨今の老若男女を問わない“仏像ブーム”などが示す様に、日本の人々の心の中に仏教は今でも確かに生きています。

仏教の開祖、釈迦(ゴータマ・シッダルタ)は、ヒマラヤ山麓のルンビニ(現 ネパール南部)で生を受けました。釈迦族の皇子として、釈迦は、類い稀なる壮大なヒマラヤの自然の中で育ったのです。釈迦に悟りを広めるよう勧めたとされる「梵天」もヒマラヤと縁があります。
つまり、釈迦の一生にはヒマラヤが深く関わっているのです。

■「環境難民」
ヒマラヤは名だたる大河、インダス、ガンジス、ブラマプトラ、長江の水源です。すなわち、大氷河の一滴よりそれら大河は成るのです。
現在、地球温暖化により、その氷河が急速に融けています。そのため、今後20年以内に、ガンジス河が干上がってしまうと警鐘を鳴らす専門家もいます。その危惧の念は、ガンジスに留まりません・・・

ヒマラヤ水系には推定13億人が頼って暮らしていると言われます。その河川が干上がってしまえば、今世紀の世界の大きな課題の一つである「環境難民」が大量に発生するでしょう。当然の如く、アジアの大国の一つである日本にも避難民受け入れ等の対策が迫られます。
温暖化によるヒマラヤの氷河融解とは“対岸の火事”などでは決してなく、CO2を大量に排出する日本社会と密接に関連しており、やがて、私たちの日常生活に早晩確実に悪影響を及ぼしてくるものなのです。
この他にも、ヒマラヤと日本は、風土、文化、社会などで深いつながりがあります。
「ヒマラヤ」を凝視することは、確かに、「日本」を再認識することなのです。そして延いては、「世界」の姿が見えてきます。



このモンスーンの雨雲は更に北東方向に移動し、太平洋の水蒸気を吸い込んで日本列島に沿って停滞します。6月頃の梅雨前線はこのモンスーンによるものであり、日本列島に水の恵みをもたらしています。もしヒマラヤ山脈が今の半分の高さであったら、偏西風は蛇行せず日本の雨量は現在の半分程度になると、気象庁気象研究所ではシミュレートしています。地球規模で見れば、日本列島の緯度の場所は乾燥地帯にあたり、世界の主要な砂漠はほぼ同じ緯度に位置しています。
このように、日本の豊かな森林や農耕文化・社会はヒマラヤという存在無くしては成り立たなかったのです。
