Autumn & winter 2016 Edition
*現在、(*日本語)の表記があるもの以外、英語になります。
今後、逐次、英文の日本語訳及び日本語字幕付けをしてゆきます。
ヒマラヤ地域北西部に位置するカシミール地方は、古来、風光明媚な土地として名高い所です。最高級の毛織物カシミアの語源の地でもあります。以前、私(ヒマラヤ・アーカイブ・ジャパン代表)も訪れたことがあり、荒々しく天空へと屹立する岩峰群、朝日に激しく燃え上がる世界第9位の高峰ナンガパルパットの雄姿等、素晴らしい風景を満喫しました。一方、残念なことに、カシミールは現在、約70年に渡る世界で最も長き紛争の地でもあります(カシミール紛争)。大国(インド・パキスタン・中国)の領有権を巡る思惑、宗教対立(ヒンドゥー・イスラム)、武力弾圧など、人間の悲しきエゴが美しきヒマラヤを背景に露わになっているのです。今年に入り、インド領のカシミールでは、地元住民(特に、若者)とインド当局の治安部隊との衝突が再び激化。更に、インド軍の基地が武装集団の襲撃にされ兵士が多数殺害され、インド政府はパキスタンの関与を指摘。両国は批難の応酬を繰り返し、関係が悪化しています。核保有国である両国の対立は国際的な懸念をももたらしています。「インドが分裂すれば、将来に重大な禍根を残す」と憂いていたガンディーの嘆きが聞こえてくるようです。カシミールの問題を通じて、私たち全てが抱える普遍的な課題の数々ー 人権侵害、宗教・国家・民族間の融和、非暴力・対話、環境破壊、国家による情報操作・統制等 ー への理解が深まるでしょう。
BBC(英国放送協会)による「カシミール紛争」の背景説明。
地図、歴史、主要な記事など、要点がまとまっています(英語)。
Kashmir's beauty | カシミールの美
『Google Earth』による「東京」から「カシミール地方」への ツアーです。
ビデオ/ 写真
”カシミールの対立”:治安維持か政治問題か?
中東の衛星放送局アルジャジーラでの討論番組。カシミール出身の作家とインド政府関連財団の代表とがインドによるカシミール統治の是非について意見を闘わせる。カシミールの住民の思いを代弁しインド帰属に関する住民投票の実施を訴える作家、一方、インド政府によるカシミール統治の正当性をひたすら繰り返す財団代表。議論は平行線のままだ・・・
”自由への反乱”:世界で最も過酷な武力弾圧
「Democracy Now! (ニューヨークの独立放送局)」の番組にて、アルンダティ・ロイ(著名なインド人作家・活動家)、サンジェイ・カク(カシミール出身インド人映画監督)両氏が、カシミールで展開されるインド政府による武力弾圧の現状について語った。何度も現地に足を運んでいる両者の見解には重みがある(2013年3月)。
"How we celebrate freedom?" (『安らぎはいずこに?』)- Part 1(第1部)
上記、サンジェイ・カク監督の2007年のドキュメンタリー作品。現地取材、過去の資料映像を巧みに織り交ぜながら、インド政府による圧倒的な武力と観光等を利用した不当なカシミール支配の実情を浮き彫りにしていく。ヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンは当作品の日本語字幕版を製作し(邦題『安らぎはいずこに?』)、主催した「ヒマラヤ国際映画祭2008」及び「ヒマラヤ国際映画祭WEST JAPAN2009」にて上映している。
How we celebrate freedom? (『安らぎはいずこに?』)- Part 2(第2部)
上記、サンジェイ・カク監督の2007年のドキュメンタリー作品。現地取材、過去の資料映像を巧みに織り交ぜながら、インド政府による圧倒的な武力と観光等を利用した不当なカシミール支配の実情を浮き彫りにしていく。ヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンは当作品の日本語字幕版を製作し(邦題『安らぎはいずこに?』)、主催した「ヒマラヤ国際映画祭2008」及び「ヒマラヤ国際映画祭WEST JAPAN2009」にて上映している。
シアチェン氷河:世界最高所の戦場(写真 by BBC)
カシミール地方のシアチェン氷河。ヒマラヤ山中、標高約6000メートルに位置する(極地を除く)世界で2番目に長い氷河(約80KM)である。この氷河の領有を巡り、インドとパキスタンとが30年以上に渡り軍事衝突を繰り返している。氷河が両国によるカシミールの分割ライン上に位置しているのだ。純白に輝く無垢な氷河に多数の兵士、多量の軍事物資が投入される様は異様そのものだ。人間のエゴによる愚行、ここに極まれり。
"Siachen: A War For Ice" (ダイジェスト版)
シアチェン氷河を巡る長期の紛争において、インド、パキスタン双方ともに、戦闘や雪崩等により多数の死傷者を出している。また、駐屯地の維持費等に年間数百億年が投じられ、ゴミと化した多量の軍需品が環境汚染をも引き起こしている。この戦闘の実態を双方の関係者のインタビューや現地取材等を通じて克明に描き出しているのが、このドキュメンタリー作品 ”Siachen: A war for ice”だ。私どもヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンは、当作品の日本語字幕版を製作し(邦題『シアチェンー氷河の戦闘』)、主催したヒマラヤ国際映画祭で上映している。
"Siachen: A War For Ice" (本編 Part-1)
シアチェン氷河を巡る長期の紛争において、インド、パキスタン双方ともに、戦闘や雪崩等により多数の死傷者を出している。また、駐屯地の維持費等に年間数百億年が投じられ、ゴミと化した多量の軍需品が環境汚染をも引き起こしている。この戦闘の実態を双方の関係者のインタビューや現地取材等を通じて克明に描き出しているのが、このドキュメンタリー作品 ”Siachen: A war for ice”だ。私どもヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンは、当作品の日本語字幕版を製作し(邦題『シアチェンー氷河の戦闘』)、主催したヒマラヤ国際映画祭で上映している。
"Kashmir - Inside A Friday Protest" - Part 1(第1部)
インド・ジャンムー・カシミール州の州都シュリーナガルでは、毎週金曜日、午後の祈りが捧げられた後、インド当局の治安部隊への投石による抗議行動が20代の若者を中心に取られている。これは、その様子を住民とインド治安部隊の双方の側に密着しレポートしたドキュメンタリー作品。恒例のスポーツ試合のように発生する衝突の異様さ、住民たちのインド政府に対する根深い憤り、カシミール問題の複雑さ等が、激しい攻防と多数のインタビュー等を通じて露わになっていく。抗議デモに加わる一人の若者の言葉が心に重く響く ー「インドの兵士達に石を投げつけたいわけではない。投石は、インド政府の不当なカシミール統治に対する我々の切実な叫びなのだ」。
"Kashmir - Inside A Friday Protest" - Part 2(第2部)
インド・ジャンムー・カシミール州の州都シュリーナガルでは、毎週金曜日、午後の祈りが捧げられた後、インド当局の治安部隊への投石による抗議行動が20代の若者を中心に取られている。これは、その様子を住民とインド治安部隊の双方の側に密着しレポートしたドキュメンタリー作品。恒例のスポーツ試合のように発生する衝突の異様さ、住民たちのインド政府に対する根深い憤り、カシミール問題の複雑さ等が、激しい攻防と多数のインタビュー等を通じて露わになっていく。抗議デモに加わる一人の若者の言葉が心に重く響く ー「インドの兵士達に石を投げつけたいわけではない。投石は、インド政府の不当なカシミール統治に対する我々の切実な叫びなのだ」。
関連ニュース / 記事
インド治安部隊による人権蹂躙
インド治安部隊によるカシミール住民の人権蹂躙が横行している。昇進や報酬得ることを目的に、無実の住民を拉致、拘禁、殺害し、パキスタンのテロリスト等に仕立て上げ事件をでっち上げているのだ。この背景には、カシミールのような紛争地帯で任務に当たる軍人は免責される(刑罰を免れる)という法律がある。住民等によりこの法律の撤廃が強く要求されているが、インド政府は一向に動かない。いきおい、人々はインド政府への不信感を益々募らせている。その他にも、インドの主要な日刊紙が暴露した人権蹂躙の数々には嘆息するばかりだ。インド宗教哲学の根幹であり、ガンディーが命がけで実践し、その崇高さを示した「アヒンサー(非暴力)」の教えはどこへ行ってしまったのか・・・
関連映画
「カシミール紛争」を引き起こした要因の一つは、疑いなく、1947年の大英帝国からのインドとパキスタンの分離独立です。「インドが分裂すれば、将来に重大な禍根を残す」と予測していたガンディーは、必死にこの事態を防ごうとしていました。
パキスタンが建国された後も、78歳の高齢を押して当国に赴き融和を図ろうとしていたのです。しかし、彼の姿勢はヒンドゥー原理主義者に「ムスリム(イスラム教徒)に過度に譲歩している」と敵対視され、結果、暗殺されました。以下、「分離」を描いた二つの秀作です。
India Pakistan Partition BBC Special Presentation
『インド、パキスタンの分離独立:分離がもたらした悲劇』
Partition
『分離:引き裂かれた家族』
当時の資料映像と関係者のインタビューとで構成されたBBC(英国放送協会)のドキュメンタリー番組。インド分離の混乱に巻き込まれた人々が直面した困難と悲劇の数々が浮き彫りにされる。
「分離」がもたらしたある悲劇を描いた劇映画。分離の混乱の中、運命的な出会いをした男女。やがて二人は恋に落ち、異なる宗教の壁を乗り越え結婚する。しかし、幸せのもつかの間、「分離」が彼らに暗い影を落としていく・・・
今回の「特集」の最後にあたり、イスラム教徒のみならず、多くのヒンドゥー教徒にも敬われ、そして何よりカシミールの人々に世代を超えて深く信仰されているスーフィズムの著名な詩人ルーミー(ヒマラヤ地域の西端アフガニスタンで生誕)の詩の一編をご紹介したい。
ただひとつの息
私はキリスト教徒ではない
ユダヤ教徒ではない
いいえ イスラム教徒でもない
私はヒンズー教徒ではない
スーフィーではない
仏教徒ではない
禅の修行者ではない
いいえ どんな宗教にもどんな文化にも属していない
東から来たのではない 西から来たものではない
海や大地から生まれたものではない 天界から来たものではない
何かの要素からできているものでもない
この世やあの世に存在するものではない
アダムとイブのような太古の物語と関係はない
いいえ わたしは何者でもない
居場所は定まらない
跡を残すことはない
いいえ わたしは身体でもない魂でもない
わたしは
愛している
あの人のなかにいます
ふたつにみえて世界はひとつ
そのはじまりもその終わりもその外側もその内側もただひとつにつながる
そのひとつの息が人間の息(いのち)を吹きこんでいます