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なぜヒマラヤなのか?

Why we pay attention to the Himalaya? 

    1世紀に入り、私たちは地球規模の様々な緊急の課題に直面しています。人類の過剰な化石燃料消費が主因とされる「地球
     温暖化」、国家のエゴや宗教観などの相違に拠る「諸紛争」、富の偏在や搾取に象徴される「グロバリゼーション」、そして福島原発事故以来世界中で論争を引き起こしている「エネルギー問題」など、これらは我々が地球市民として共に考えていかねばならない問題です。

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人類の課題を映し出す聖地・「ヒマラヤ」

今から遥か昔、約5000万年前にインド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して誕生したのが「ヒマラヤ」です。ヒマラヤ」とは、その中心に位置するエベレストを含む“世界の屋根”たる高山地帯と周辺の高原や平野より成る東西2400キロ、南北300キロに渡る広大な地域を指します。日本の本土がすっぽり収まる広さであり、ビルマ・ブータン・中国・チベット・ネパール・インド・パキスタン・アフガニスタンの国々・地域に跨がっています。ヒマラヤの氷河は世界有数の大河の数々(ガンジス、インダス、長江、メコン等)の水源で、その流域には13億以上の人々が暮らしています。ヒマラヤは世界の気候にも大きな影響を与えており、日本の梅雨はヒマラヤのお蔭なのです。ヒマラヤ地域は動植物や民族性のとても豊かな場。自然の多様性はアマゾン河流域に匹敵し、絶滅に瀕する貴重な動植物も多数棲息しています。民族的には、ネパール一国だけで100を越える民族がいるのです。この様な理由から、ヒマラヤの一部である「サガルマータ国立公園」(ネパール)は、世界遺産にも登録されています。

*宇宙から見たヒマラヤ地域
【中央の白い”帯”がヒマラヤ山脈。左側がインド亜大陸、    右がチベット高原】

ヒマラヤは、古来、探検家、芸術家を初めとする多くの人々のロマンを掻き立ててきた世界で最も著名な聖地の一つ。そこは、仏教ヒンズー教チベット仏教等の発祥の地です。仏典やヴェーダ聖典は、世界中の多くの人々に人生の意味を諭し、生きる指針を今日においても与え続けています。又、敬虔なヒンズー教徒であったマハトマ・ガンジーが実行した非暴力やダライ・ラマ14世(チベット仏教最高指導者)の説く慈悲は、多様な紛争、経済格差、大量消費、テロ等により混迷の度を深める現代社会において、改めて多くの関心を集めています。仏教の教えに基づく心の豊かさという観点から、ブータンは国民総幸福量(GNH)という独自の幸福を表す指標を国策に用いています。GDP(国内総生産)という従来の一般的な豊かさを示す指標に一石を投じるGNHの考えを、ブータンは国連等を通じて国際社会に提案しています。更に、パキスタン人でイスラム教徒の少女マララ・ユスフザイの不屈の精神は、困難に喘ぐ世界中の人々に立ち上がる勇気を与えているのです。マララは、史上最年少でノーベル平和賞を受賞

しました。自然との調和を重視する伝統的なヒマラヤの民の生活も、ヴァンダナ シヴァヘレナ・

ノーバーグ=ホッジなどの著名な環境活動家により紹介され、高い注目を集めています。このように、

ヒマラヤの智慧の数々は、より良き社会の創造を目指す如何なる人々にとっても有益で貴重な指標となるに

違いありません。

一方、ヒマラヤには別の面もあります。この地では今、地球温暖化による氷河の融解、開発・森林伐採等による環境破壊、貧困、近代化による伝統文化の喪失、民族・宗教紛争、人権問題、グローバリゼーションなど、世界共通の諸課題が凝縮して現れています。すなわち、ヒマラヤは21世紀の現代社会を写し出す「鏡」なのです。以下、ヒマラヤに現れた諸問題(一部)の様相です。

■地球温暖化地球温暖化により、最近の20年間でヒマラヤの氷河の多くが著しく融け後退しています。その結果、各所に氷河湖が出現し、その幾つかは既に決壊し地元コミュニティに甚大な被害をもたらしているのです。又、世界第三位の規模を誇る淡水の”貯蔵庫”であるヒマラヤ氷河の融解が続けば、そこを源とする大河川の水量の減少を引き起こし、引いては各地で大規模な干ばつが発生するとの専門家たちによる警告もあります。それに伴う大量の「環境難民」の発生も危惧されています。

■環境破壊希少動植物や絶滅危惧種の生息地であるヒマラヤの貴重な森林が、人口の増加に伴う木材の伐採、大規模な開発等により破壊されている。インドのヒマラヤ地域に関する諸研究に拠れば、1970年代に比べ既に

15%の森林地帯が失われているとのこと。森林減少がこのペースで続けば、

ペースで続けば、2100年までに全体の3分の2の森林(密林)が消失するとされる。同じく2100年

までにヒマラヤの希少種の4分の一が失われると研究は指摘しています。

■貧困・差別:1996年より10年に及んだネパールの内戦は1万人以上の犠牲者を出した。この背景には、長年の国民間の貧富の差、カースト制度による差別、女性への偏見・虐待等があります。そこへマオイズム(毛沢東主義)を信奉するマオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)が現れ、既得権益を有する国王を中心とする政府と衝突し内戦を引き起こしたのです。この内戦の末にネパールは王制から共和制へと移行しましたが、政治、経済、社会共に、未だ不安定な状態にあリます。一方、高度成長するインドでは、社会の格差が更に拡大し、人々の不満が犯罪等になって顕著化しています。

■民族・宗教問題地政学的な不安定さ、宗教・信仰の違い、多民族が混在する状況などにより、

中国、インド、パキスタンの国家間、国内において、様々な紛争が起こっています。60年代の中印国境

紛争、印パ間の60年以上に渡るカシミール紛争。中国により50年代に侵略されたチベット(「チベ

ット問題」)に関しては、未だに地元のチベット民衆やインドなどに逃れた難民達による非暴力の抵抗

が続いています。2011年からこれまでに、およそ200名もが焼身により中国政府の圧政に抗議して

おり、その大半が亡くなっています。

「ヒマラヤ」を通じて、”地球市民”へと目覚める

"インドのシェイクスピア”と尊称される5世紀のインド人詩聖カーリダーサは、美しく印象深い詩『クマーラ・サンバヴァ』の中で、ヒマラヤを「二つの大洋に挟まれた大地にまたがる巨大な物差し」となぞらえ、その偉容を讃えています。ヒマラヤが“物差し”
だとすれば、21世紀の今日、それは人類の生き方を測り照らし出す“聖なる物差し”と呼べるでしょう。

ノーベル平和賞受賞者で祖国を失った難民でもあるチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は、かつて、チベット高原を非暴力を軸にした聖域にする夢(“チベット高原アヒンサー(非暴力)地域構想“)を語っていました。


     「いつか、チベット高原全体を自由な聖域にしたい。そこでは、人と自然とは調和し共存する。
    世界中から、人々が日常のストレスや困難から離れて、真の平和を自らの心の内に見つけ出すために訪れる。
   つまり、(世界において)チベットが平和を促進し発展させる創造的な中心地となるのだ」


我々ヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンは、チベット高原を含むヒマラヤ地域全体がその様な聖域、“モデル地域”となることを切に願っています。“ヒマラヤの智慧”により現代社会を俯瞰・探究する諸活動を通じて「(人類にとっての)より良き社会とは何か」を皆様と共に考えながら、先の壮大な構想の具現化に寄与することを(僭越ながら)思い描いているのです。それは取りも直さず、インドの聖典
『バガヴァッド・ギーター』
*1が説く「あらゆる生物を自己と等しく見る人」、つまり“地球市民”へと目覚める道のりを一人一人が歩み出すことを意味しています。

 

           「世界に良き変化を望むなら 自らがその変化の先駆けとなれ」  ― マハトマ・ガンジー

 

現在、日本社会は将来のビジョン無き内向化が急速に進行しています。東日本大震災後の不透明な原発対応、政治の右傾化、ヘイトスピーチ、ブラック企業、学校・職場での陰湿なイジメ、極度の格差・貧困など、これまで以上に「エゴ」「欲望」「恐怖」が増殖しています。未曾有の東日本大震災、それに伴う大規模な原発事故の衝撃の後、専門家、一般人を問わず、多くの方々が当然のごとく「日本社会の根本的な変革」を唱え、訴えていました。日本の原子力工学の第一人者、小出裕章氏がガンジーの7つの社会的罪を引き合いに出していたのは特に印象的でした。残念ながら、その後、日本社会は「大震災」から本質的には何も学ばず、その”罪の道”を突き進んでいるように見えます。私たちHAJは、今こそ、将来を見据え、社会通念に囚われずに個人・社会の変革を真剣に考える人々にガンジーを含む “ヒマラヤの智慧”の数々に触れ、その知識を実際に各行動に応用して頂きたいと心より願っています。 「ヒマラヤ・
アウェアネス・チャンネル
」を初めとする諸プロジェクトを通じてそのお手伝いをすること、それがヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンの使命なのです。

*1バガヴァッド・ギーターガンジーが座右の書とし、アインシュタイン、ソロー、カミュなどの著名人が愛読したインド屈指の聖典。

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